ノマドランド(2021年3月26日より公開中)

必要最小限の物しか持たない「ミニマリスト」とか

パソコン1つであちこちで仕事をする「ノマドワーカー」とか

なんとなくオシャレな響きがあるような

イマドキなカテゴリーですが、

現実はもっともっと覚悟を決めて、

腹くくって生きるものなのでしょう。

 

キャンピングカーに生活に必要なものすべてを詰め込んで

あちこちを旅しながら暮らす現代のノマド(遊牧民)たち。

実際にノマドとして暮らしている人たちの中に

オスカー女優・フランシス・マクドーマンドが飛び込んで撮影した

フィクションともドキュメンタリーとも言える映画です。

監督は次作はマーベル作品に抜擢されているという、

(ものすごく多才なのでしょうね)クロエ・ジャオです。

 

フランシス・マクドーマンドが演じるのは

夫を亡くし、長年暮らしてきたネバダ州の会社も倒産し

身の回りのものをキャンピングカーに積んで

各地を季節労働者のように渡り歩く暮らしを選んだファーンという女性。

時にはホリデーシーズンで忙しいAmazonの配送センターで働き、

時にはバーガーショップの店員や、工事現場の作業員など

短期労働をしながら

キャンピングカーで移動をします。

そんな現代の遊牧民たちとの交流の中で

ファーンが出会いと別れを繰り返し、

選んだ生き方を静かに描いています。

 

ファーンが出会うノマドの1人に

スワンキーという女性がいます。

彼女は実際にノマドとして暮らしている女性です。

スワンキーの生き方、いや、人生の最期まで見据えた覚悟が

あまりにも潔くて、そして美しくて、

気持ちに突き刺さってきました。

 

非常に私事ですが、

40代後半にもなると、

この間まで笑って同じ時を過ごしていた人が

突然旅立ってしまったり、

ずっと一緒に楽しい時間を重ねていけると信じていた人が

志半ばでいなくなってしまったりする

悲しい出来事も起こるようになってきます。

 

そうやって大切な人を見送るたびに

私はどうやって生きようか、何を大切に人生を歩いていくのか、など

普段の私とは全然違うシリアスな思いにとらわれることもあります。

 

「ノマドランド」を観た後、

また同じように考え込んでしまいました。

私は自分の人生にもっと筋を通すべきではないのか、と。

そんな大それたことではないのです。

小さいけど、大切なことを、もっと大切にしなくてはと思ったのです。

 

それは言葉にするのは難しいけれど

この世を旅立つ時に

「私はたくさん美しいものを目に焼き付けたから、

大満足。もう十分この世界を楽しんだよ」って

言えるように生きていきたい。

多分、あえて言葉にするならこんな感じです。

日常に追われているだけでは、

あまり考えが及ばないところに引っ張り出してくれた

この映画「ノマドランド」にありがとうと言いたいです。

 

原作は、気鋭のジャーナリスト、ジェシカ・ブルーダーの

ノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」で、

この本自体が大きな話題となりました。

そして映画「ノマドランド」に出てくる

ノマドとして暮らすことを選んだ人たちは、

実際の名前で登場し、彼らがファーンと交わす会話の多くが

アドリブだったそうです。

 

先ほど書いたスワンキーもその1人。

彼女は誰にも頼らない生き方を選んだのに、

映画の中でファーンに頼み事をするシーンがあり

それがとてもしんどかったとインタビューで答えていました。

とてもリアルで、たくましくて、

切なくて、自由な彼ら。

そしてアメリカ各地を旅するファーンが見る

壮大な風景、圧倒的な迫力は、

紛れもない芸術です。

 

日本時間の4月26日(月)に発表される

アカデミー賞主要6部門にノミネートされていて、

オスカーに最も近いとも言われる映画ですが、

多分、20代の頃の私が観たら「ちょっと地味な作品だな」と

思ったかもしれません。

今、この作品を見終わった後、

しばらく席から立ち上がれなかったほど

心を動かされた私自身を考えると、

歳を重ねることはなかなかいいものだなとも思うのです。

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