みんながそれぞれできることを

社会人になってもうすぐ四半世紀が経とうとしている中、

この夏から秋にかけて、

私は社会人生活の中で最も難しいプロジェクトかもしれない

というお仕事に関わらせてもらっていました。

それは、聾学校の小学生たちとテレビ番組を作るというプロジェクト。

 

これまでも、小学生と地域を紹介するテレビ番組づくりなどのワークショップを

やってきたチームで今回お邪魔したのは、

耳の聴こえない子供たちが通う学校。

 

 

私はこれまでの番組づくりの時と同じく、

キャスター役の子たちへのトークの指導や、

学校の周りの地域を取材するときのインタビューの仕方などを教える役割を

仰せつかりました。

 

 

でも、耳の聴こえない子たちにどうやって教えればいいのだろうか・・・。

そもそも、初めましてで自己紹介する時に、

「ラジオで喋っている」と伝えてもわかってもらえるのだろうか、

彼らはラジオを知っているのかなぁ・・・。

 

大きな声で話そう、と言っても

そのボリュームの違いはわかってもらえるものなのか・・・。

 

私はどんなスピードで、どんな口調で話しかけたら

わかってもらいやすいのか・・・。

疑問と不安ばかりがぐるぐる渦巻きました。

 

 

プロジェクトが始まった頃に、打ち合わせがてら、学校へお邪魔しました。

子供達の様子を見せてもらわないことには、何も分からないですしね。

 

 

チームのメンバー4人で学校へ行きました。

正直いうと、聾学校って学校の中が静まり返っているのかと思っていました。

学校に入った瞬間、「あれ?めちゃめちゃ賑やかだわ」。

いわゆる「小学校らしい音」がいっぱい聞こえてきます。

子供達のはしゃぐ声、走り回る音、机や椅子を移動させる音などなど。

そして私たちに「こんにちは」と元気に声をかけてくれる子供達もどんどん出てきます。

これまでにテレビ番組づくりをした学校と同じような感じです。

 

 

ただ違っていたのは

「こんにちは」と声をかけると同時に、手話もしていること。

そして、耳に補聴器をつけたり、耳の後ろ側に装着された

「人工内耳」をつけている子ばかりだということ。

 

 

ラジオをやっていると、

とにかく「耳からだけの情報のメディア」ということをいつも意識しています。

それだけに、聾学校に通う子供たちはラジオに興味ないだろうなと思っていました。

そして、自分の声を使って話すことも苦手なのかなと思い込んでいました。

 

でも、初めての聾学校訪問で出会った子供たちの中には

「カーモンベイベー アメリカー♩」と歌って踊る子がいたり、

「ねーねー、カメラ触ってもいい?」と人懐っこく話しかけてくる子がいたり。

補聴器や人工内耳が見えなけば、

ここが聾学校だということに気づかないような様子の子もいました。

 

 

少しゆっくり、丁寧に発音して話しかければ、

コミュニケーションは簡単にできる子たちがたくさんいたのです。

これは、私の聾学校のイメージと全然違っていて、

とても勉強になりました。

 

一方で、人工内耳をつけてもほとんど聴こえない子もいて、

そういう子供たちの母語は手話になります。

声を出して話しながら手話をしてくれることもありますが、

発音だけで彼らが話すことを聞き取るのは難しいです。

手話を母語とする子たちとは、先生の通訳を介して話しました。

 

つまり1つの学校で、言葉で話す日本語と、手話、

という2種類の言語が存在しているのです。

先生方も生徒たちも、両方使いながらコミュニケーションをとっています。

見事なのは、相手によって手話をメインにするのか、

日本語の話し言葉にするのかを切り替えているところ。

これはバイリンガルと同じことだなぁと感じました。

 

実際、日本語を話しながら手話をするというのは、

2つの言語を同時に扱うような難しさがあるんだそうです。

手話といっても、

固有名詞は指で1つ1つの音を表現する「指文字」を使うので、

名詞や動詞の「意味」を動作で表す手話の合間に、

1つ1つの「音」を手の動きで表す指文字が入ることになります。

みんなサラッとやっているので、私もやってみようとしましたが

なかなか覚えられないものです・・・。

 

 

 

とまぁ、前置きが長くなりましたが、

そんな様々な聴こえ方をする小学3年生、4年生、5年生の10数人

との番組づくりが始まりました。

 

 

夏から秋にかけて2時間授業を4回しに行っただけでなく

私たちが行かない間も、

先生方と児童たちがどんどんプロジェクトを進めていました。

 

 

それぞれの聴こえの度合い、また複合的に障害を持つ子もいるので

それぞれができる範囲での役割分担が行われました。

でも、学校側からの希望で、

どの役割の子も一通り全ての役割を経験できるように授業を進めていきました。

 

 

インタビューの時は、はい、いいえ、だけで答えられるような質問より

相手がたくさん喋ってくれるように

「なぜですか」とか「どうやってやるのですか」

というような質問を増やすといいよ、とか

決められた質問だけでなく、相手の答えを聞いて疑問に思うことがあれば

どんどん質問していこうね、

そのためには相手の話をしっかり聞こうなどと

インタビューのコツを説明したり、

カメラの前の立ち位置の決め方など、具体的な説明をしていきました。

 

 

一生懸命聞いてくれた子供達は、

その後の取材に早速伝えたことを実践してくれたりして

とにかく素直で吸収力が高い!

そして彼らの表情がとても豊かで、

いつも生き生きしていることも印象的でした。

みんな子供らしいまっすぐさで、番組づくりを一生懸命楽しんでくれました。

 

 

 

スタジオ(教室)にメインキャスターが3人。

オープニングの挨拶から始まり、

子供達が事前に取材に行っているので、

そのグループごとの代表のレポーターによるVTRの振り、

「学校周りの地域の紹介」「学校紹介」などのVTRを流した後の

キャスターの受けコメント、

そしてエンディング。

というトータル30分ほどの番組です。

タイトルは、ザ!聾ニュース。

教室をニュース番組のスタジオに見立て、 児童たちが看板も作りました。

 

 

 

プロのカメラマンも番組づくりチームにいるので、

プロの機材を使いながらの収録、カメラも3台。

全て子供達が撮影しました。

 

カメラのスイッチを入れる、

ちゃんと写っているか確認できたら、

カチンコを鳴らす役の子に「いいよ」と合図を出す。

カチンコが鳴ったら、キャスターやレポーターが

手話と口話の両方を使って話し出す。

 

 

そんな風にして収録をしたのが、昨日のこと。

みんな本当に集中して、一生懸命頑張りました。

だから予想以上にスムーズに、最後のスタジオ収録が終わりました。

あとは、チームメンバーのプロカメラマンさんが

カッコよく編集してくれるはずです。

 

 

収録が終わってから、子供達の振り返りの感想を発表する時間になりました。

レポーター役をやった男の子が言いました。

「僕はカチンコをやったMちゃんが一番良かったと思います」。

 

Mちゃんは、耳が聞こえないと同時に、視力も非常に低く

みんなで見るテレビの画像も、彼女は専用のiPadを目の前に近づけて

じっと見つめてようやく見えるくらい(自分が写っているのに気がつくと、

体をくねらせて恥ずかしそうに笑うのがたまらん可愛さなのです)。

Mちゃんは声を出して話すこともほとんどできないので

カチンコを鳴らす役に全力を注いでくれていました。

 

そのMちゃんをしっかり見て、よかったと褒めた男の子。

こういう目線が自然に生まれている学校なんだなと、

とても暖かい気持ちになりました。

 

キャスター役の子たちの仕事量が1番多かったので、

どうしても先生方からの指導も増えてしまいます。

褒められることが多いのもキャスター役の3人。

だけど、教室の隅で、

小柄な彼女の手にはちょっと大きすぎて持ちにくいカチンコを

一生懸命鳴らしていたMちゃんのこともちゃんと見えている仲間たち。

この感想を聞けただけでも、このプロジェクトに関わらせてもらえて

よかったなぁと、気持ちが熱くなりました。

 

とにかく、相手を知ること。

知っていけば、垣根なんてできるはずがない。

心の中の思い込みなんて、あっという間に消えていくものですね。

“みんながそれぞれできることを” への8件の返信

  1. 真美子さん、こんにちは^^
    まだまだ繋がってますよね〜。
    でも、COCOLO離れ?は、やっぱり淋しいなぁ…
    あ、真美子さんは、今は、感傷に浸る余裕がないくらい忙しいか…?笑笑

    金子みすゞさんじゃないけど「みんな違ってみんないい」。機械じゃないから違って当たり前。子供達は無垢な目でたくさんのことを見てますよね。大人の様な、世間知や計算みたいなものがありません。
    時には、残酷だったりもしますが…。悪意や邪念が無い。子供に教わる事はたくさんあります。
    ワタシのお店にも、耳が不自由なお客さんが来られます。見た目だけではわからないので普通に接していました。ある時に、細かな注文をメモで渡され、初めてその方が聞こえない事を知りました。ワタシは手話は出来ませんが、身振り手振りと筆談で色々お話ししています。(控えめで物静かな方だと思っていたのに、お喋り好きな行動派でしたの…笑笑)
    変な気遣いをせずに、お互いのことを伝えれば良いのだなぁと思いました。
    街中で知り合いに出会っても、時には会釈や手を振ったりするだけの事もあるのと同じように、声だけでないコミュニケーションも大切ですね。

    1. 繋がってますよー。もちろん、これからも。
      そして私は感傷に浸りながら、せっせと段ボールに荷物を詰めたり
      断捨離しまくったりしています(笑)

      大人になると、変な気遣いや、気構えみたいなものが
      人間関係の邪魔をすることもありますよね。
      失礼なことをしてはいけないとか考える以上に、
      相手のことを大切に思えば、それがきちんと伝わるんだなと
      今回のプロジェクトですごく教えてもらえたことです。
      相手を思う気持ちがあれば、筆談だろうが、ジェスチャーだろうが
      コミュニケーションは十分取れますね。
      そしてまずはスマイル。
      あなたのことが好きだよっていう笑顔はいつだって無敵ですよね!

    2. クルミのママさん、真美子さん、お邪魔します。真美子さんがCOCOLOを離れるのは本当に寂しいですが、こうやって繋がっていられて良かったですし、幸せです!これからも宜しくお願い致します(*゚∀゚人゚∀゚*)♪

      1. 真美子さん、ユナパパさん、ホントにありがとうございます。
        繋がってるって、うれしいですね^^
        温かい気持ちになります。
        ラジオを、COCOLOを聴いていて幸せだなぁと思います。
        それだけに、真美子さんがCOCOLOを、関西を、離れる理由に物凄い理不尽さを感じました。とても、悔しかった。
        なので、家族や友達とたくさん話します。
        とりあえず、みんなにどう思うか聞きたい。それが広がって何か変わるきっかけが生まれるかもしれないから…
        何かしら、ワタシにも出来る事を探してみたいです。
        真美子さんもユナパパさんも、とても強い人です。そして、その強さは優しさです。
        ワタシも、強くなりたいと思いました。

  2. 真美子さん、最後の放送も涙、涙でした。沖縄に移住する理由を聞いて「やっぱり」と思いました。広島の修学旅行辺りから心配していました。次女も障害のせいで同じ様な体験をしています。同級生の物が無くなり、出てきたのは次女のランドセルの中からでした。先生の対応も「偶然では?」訳、ないやろが!!あまりにショックで。
    次女の中学校は普通科と迷いましたが、イジメに合うのは目に見えているので支援科に行かす事に決めました。
    次女のお陰で色々なお友達と会う事が出来ました。障害のあるお友達は本当に優しく思いやりがあって、なにより底抜けに明るいです!真美子さんも悩みに悩んで、でも、本当に素晴らしい体験をされたと思います。障害も個性として皆が分け隔てなく暮らせる世の中になれば良いのになぁ(´・ω・`; )

    1. お嬢さん、辛い思いをされましたね・・・。悔しいです。
      ユナパパも奥様も心痛まれたことでしょう。本当に残念です。
      何故なんでしょうね。
      今の子供たちは学校という枠組みの中に押し込まれて、その中でさらにお互いを
      比べ合って、周りと一緒じゃないといけないという圧力をかけあっているように
      感じます。伸び伸び生きられるはずがありません。
      子供達が苦しんでいる世の中は、大人が作り出しているのでしょう。
      私はこれからも私なりにできることを考え、やっていくつもりです。
      どんな人も機嫌よく、幸せに生きていける社会を目指したいです。

  3. そうですね!大人が子供達が子供らしく無邪気にのびのび過ごせる世の中を作らないといけませんね!!

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