【虫が苦手な方、要注意!虫画像が出てきます】
私には1歳上の兄がいます。しかも育ったのは自然がいっぱいの奈良。
だから子供の頃は虫遊びもいっぱいしました。
バッタやカマキリを捕まえたり、夜にクヌギの木に樹液を塗りに行って、朝早く見に行くと、樹液に群がるカブトムシがいて採りまくったり、カナブンを手に乗せてみたり、虫取り網で蝶々をおいかけたり・・・。
だから虫は基本的に怖くありません。気持ち悪いとも思いません。
私は娘1人しか生みませんでしたので、男兄弟と遊ぶという経験もないうちの娘も、虫は好きな方だと思います。平気で捕まえますし、昨日は「ねぇねぇ、ダンゴムシってなんであんなに可愛いんだろ♡」ととろけそうな顔で言っていました。
そんな、虫への耐性は比較的ある私が、唯一といっていいくらいにダメなのが、ゴキブリです。Gはアカン。なんといっても気持ち悪い。できるだけ遭遇することのないように、今ぐらいの季節から、夏に向けて万全を期した対策を取ります(ホウ酸団子よ、いつも守ってくれてありがとう)。
そんな今日、
最近、昆虫食に興味を持ち始めた私は、グランフロント大阪で開催された、ナレッジキャピタル大学校内に、先日食べたコオロギの粉を販売している大阪の会社、entomoさんや、昆虫食に携わっている方々がブースを出されるという情報を聞きつけ、出かけてきました。
コオロギの粉のほか、コオロギ粉を使ったおやつ、おつまみ感覚で食べられるバッタ、イナゴで作った調味料(魚醤のようなもの。魚を発酵させて醤油のような調味料にするのと同様に、イナゴのタンパク質を米麹で発酵させて作った醤油)など、食材としての昆虫のポテンシャルの高さを感じさせるものたちに出会いました。
そんな私の視界の右側に、なんだか気になっているものがちょろちょろちょろちょろ・・・。

シルバーのボウルに、薄い木くずのようなものがたくさん入っていて・・・その向こうに黒光りするあいつは。
Gだぁぁぁぁぁ!!
しかも、「さわれます」って書いているしっ!!!!!!!
どうしても近寄れないよー。
でも、そのゴキブリを持ってきてくださった、和歌山の地域活性化支援団体「いなか伝承社」代表の田中さんが、和装の似合うはんなりとした、優しそうなお兄さんなわけですよ。呉服屋の若旦那って言われたら、信じますがなっていうビジュアル。
その田中さんがオオゴキブリについて教えてくれました。
・山奥の、朽ちた木に生息するゴキブリ
・このオオゴキブリが木を分解してくれるから、森にはなくてはならない存在
・飛べないし、動きもゆっくり
・木しか食べないので、清潔
・都会では絶対に暮らせない
・穏やかな感じなのでペットとして愛好する方もいる
・つまりは家に出てきて嫌われるゴキブリとは、まったく別物
・今日は高野山の山奥にいたオオゴキブリを捕まえて持ってきた
・昆虫食としてもいけるけど、それほど大量に生息しているわけでもないから、特別な時にしか食べないようにしている
・仲間とのコミュニケーションを取り合うのに、羽をかじる
・だからもともと飛べないけど、ますます羽が短くなって飛べない
・羽をかじられないオオゴキブリはボス的存在だけ
・弱い個体ほど羽が短くなって、お尻が見えちゃう
・今日はお客さんに触られまくっているから、手に乗るのも飽きてきちゃった
そんな説明を聞いていたら、どんどん可愛く、いじらしく思えてきたのです。
そう、自分の心の中にあった、高い高い敷居が、ぐーーーーんって下がっていく感覚がありました。
ゴキブリ、と聞けば、万里の長城並みのバリアを張り巡らせる私が、オオゴキブリのことを教えてもらえばもらうほど、抵抗感がなくなっていくのです。
おお、これはもう私の中では「ゴキブリ界のベルリンの壁崩壊」レベルの出来事なのですよ。心の中で、大きなハンマーを握りしめた若者たちが歓声をあげて、コンクリートの壁をぶち壊していくのです!
オオゴキブリよ!君はそんなにも頑張って生きているのだね!すごいじゃないか!
がーん!がーん!(ハンマーで壁を壊す音 in 小谷の心)。
そしてそれまで1メートルくらいの「適切な距離感」を保っていた私が、少しずつボウルへとにじりより始めたのです。
にじり にじり にじり。
そしてそっと手を差し出す。
和服屋さん若旦那風の田中さんが、オオゴキブリを1匹捕まえて、私の手に乗せてくれようとする。うろうろ逃げ惑うオオゴキブリ。そうだった、今日はお客さんの手に乗せられまくって、もううんざりなんだよね。ごめんよ。でも私はこのベルリンの壁崩壊を最大限、君と近づいて祝いたいのだよ!!私の身勝手を許しておくれっ!!
そして、ついに、
私の手にこそこそっと乗ってきてくれたオオゴキブリ。
最初にかけた言葉は(つーか、ものすごく人がいっぱいいるグランフロント、ナレッジキャピタルでゴキブリに話しかける女ってすごいな、私)、「ごめんねー。今日は疲れちゃったよね。触らせてくれてありがとう」。
ほとんど無意識に出てきた言葉でした。
私が、あの、あの、ゴキブリに感謝の気持ちを伝えているなんてーーーー!!
そしてゴキさんをしばらく眺めていたら、気分はもうすっかり東西統一。
壁の瓦礫すら消えました。ベルリンの壁崩壊、ばんざーい。ピース!
(虫苦手な方、気をつけて、この次、ドーンと画像きますよ)
見た目はやっぱりゴキブリなんですけどね。ほら、だって足の毛。
毛?じゃないか。足でもないね。脚かな。
でも、あのもじゃっとした脚は、やっぱりいただけない。
いただけないけど、もはや手に乗っているわけですから。
なんか別にどうってことなくなってきました。
隣で見ていたおばちゃんも「うわ、うわ、私触るのは無理だわー」とか言っていたのに、私の手に乗ったオオゴキブリを見ていたら、にじり にじり、寄ってきましたよ。
「せっかくならこんな貴重な体験、させてもらわなきゃねーーーー。私もさわりますぅぅぅ〜」と、断末魔のような雄叫びをあげながら、その手にオオゴキブリを乗せていました。
「おばちゃんのベルリンの壁崩壊もおめでとう!!」と心でつぶやきつつ、
私は目に最大限の祝福を込めておばちゃんを見ました。
おばちゃんも私を見つめ返します。そして笑顔で、
「こうしてみると、平べったいカナブンみたいよね」。
いや、平べったい段階で、かなりのゴキブリ度なんですが。。。
とは口には出さずに、にっこり笑顔を返しておきました。
ゴキブリが作る世界平和。あぁ、美しい。
帰り道にもずっと心の中で反芻していました。
あの、心の中の敷居がぐーっと下がる感じ。
そして高々とそびえ立っていたベルリンの壁がガンガン崩壊していく感じ。
それはとても気持ちの良い感覚でした。
昆虫食に対しても、同じことがいえるのだろうなと思いました。
見た目のグロテスクさ、これまで食べ物に入っている虫=異物だったのが、昆虫食としては、虫=食材なのですから。
でも心の敷居を下げることで、きっとどうってことない感覚で虫を食べることもできるようになるのでしょう。
そして心の敷居を下げるには、相手を知ることに尽きるなと実感しました。
相手を知れば、そこに感情が湧いてくる。
あぁ、かわいいな。魅力的だな。いじらしいな。大切だな。
そんなプラスの感情が積み重なることで、私たちのベルリンの壁はいとも簡単に崩壊できるのかもしれないと思いました。それを価値観の変化と呼ぶのかな、などとも思いました。
昆虫食が栄養的にも、環境の面でも優れた食材だということは、どんどんわかってきました。そして実際これまでに私が口にした昆虫食は、どれも美味しいと感じられるものばかりでした。
だから昆虫食に興味がある、というのももちろんそうなのですが、今日の私の体験から気づいたのは、それだけではないということ。
私が昆虫食に興味があるのは、未知なる世界へのワクワクと、そこに自分がどれだけ色眼鏡なく接することができるのかを知ることができる、いわば、自分が変わっていく感覚を実感できるから、というのも理由になっているのだなと思いました。そう、まさに価値観の変化。うーん、変化というよりは、価値観の包容力アップ、という感じでしょうか。
今日の私の価値観は、「プリティウーマン」のリチャードギアもびっくりの包容力に違いないですわ。
ありがとう、オオゴキブリ(おお、人生2度目のゴキブリへの感謝)。
このイベントが終わったら、無事に高野山に帰るんだよ。そして美味しい朽ちた木を存分に食べてね。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
特に虫の嫌いな方。ありがとうございました。
でも、虫嫌いなのに最後まで読めたってことは、あなたの、虫に対するベルリンの壁も、ちょっと崩れ始めてきているかもしれませんよ。うふふ。