先日、とあるシェフの方からご質問をいただきました。
その方は、シェフの知識や技術を生かしながら、病人食の勉強もされていて、地域のお年寄りが食べられる、体に優しいお食事の提供などもされています。
いただいたご質問は「普通の栄養学と、アスリートフードの違いについて、また糖質制限についてのお考えも聞かせてください」ということでした。
なるほど、普通の栄養学とアスリートフードの違いって、シンプルでいいご質問!(糖質制限についてはまた後日投稿しようと思っています)
では私なりのお答えを。
健康的に暮らすために必要な五大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)を、バランス良く食べるというのは、基本中の基本。
一般的な栄養学はこれをベースに進められますよね。
アスリートフードマイスターに関しては、この一般的な栄養バランスを踏まえた上で、普通の健康的な食生活に加えた注意点があります。
現代社会では栄養バランスの良いバランスを取りながら、普通に食事をしていると「食べ過ぎ」てしまいがち。ですから、食べ過ぎないように気をつけることも大切なこと。
一方、アスリートフードについては、運動量、エネルギー消費量の多いアスリートが普通の食事をしているだけだと、必要な栄養素が不足しがちなので、不足しないようにすることが、とても大切になってきます。
ただし、関わっているスポーツ、年令、性別などによって「不足しないように」気をつける栄養素は、変わってきます。
例えば
1 長距離走、サッカー、トライアスロン、登山など、長時間にわたって体を動かすスポーツ(目安は1時間以上行われる競技)の場合、持久力が重要ポイント。
持久力のために必要な栄養素は、炭水化物(糖質)です。
穀類、イモ類、砂糖、バナナなどを多めに摂取することで、スタミナが切れないようにすることを目指します。
また炭水化物をエネルギーに変換するのに必要なビタミンB1も合わせてしっかり摂取します。玄米、豚肉、うなぎなどが、ビタミンB1多めの食材です。
持久系のスポーツに不足しがちな栄養素は、他にもあります。鉄分です。
特に女性アスリートには不足が目立つ栄養素であり、糖質のようにいきなり摂取してすぐに効果がでるものと違い、日頃から小まめに鉄分摂取を意識することが肝心です。アサリとかパセリ、赤身の肉・魚など、鉄分の多い食材を日頃から取り入れたいものです。
2 短距離走、砲丸投げ、相撲、ウェイトリフティングなど、あっという間に競技が終わり、一瞬に力を発揮するタイプの競技に必要なのは、瞬発力。
瞬発力に必要な栄養素は、筋力の元になるたんぱく質。
肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品などの摂取を心がけます。
3 そのほか、メンタル面が大きな影響力を持つ競技もあります。
弓道、アーチェリー、フィギュアスケート、ゴルフなどがあげられそうですね。
精神的な安定をもたらす栄養素はカルシウム。イライラを抑えてくれると言われています。乳製品、魚類、海藻類などを積極的に摂りたいものです。
以上の3つは、それぞれが独立しているというよりは、競技によって、組み合わせて考えるべき要素ですね。
例えばフィギュアスケートはメンタル面も大事ですが、ジャンプの瞬間は瞬発力も必要です。フリープログラムの後半には「スタミナ切れで、いいパフォーマンスができなかった」なんていうコメントをされるスケーターも多いですから、持久力ももちろん必要です。それに加えて、審美系のスポーツですから、体重管理にもかなり気を配らなければなりません。
ゴルフも、競技時間は長いですし、持久力も必要です。スイングの瞬間には瞬発力も発揮することになります。そして並外れた集中力、メンタル面のコントロールも大切な競技です。
ですから、アスリート=この栄養素を増やす!という単純な図式が作れないのがアスリートフードなのです。
関わるスポーツによってどんな栄養素が必要か、どのタイミングで摂取するのか、通常のトレーニング期か、試合直前か、試合中か、試合直後か、などのタイミングによっても変わります。
トレーニング期でも、休養を重視している時なのか、筋力アップを目指している時なのか、体を絞る時なのか、などで摂取するものが変わってきます。
あえて、ごくごく一般化して話すならば、
・エネルギー供給のための糖質を意識する
・汗でミネラル分が多く流れるので、一般的なミネラル摂取量より多めに
・摂取カロリーも多くなる分、食事の量が増える=塩分、食品添加物などの摂取量も増える可能性が高まるので、食の安全への意識(食品表示などの知識)を持つ
といった要素があげられます。
こういったことから、通常の食事に加えて、コップ1杯の牛乳(または乳製品)と、果物をつけるのが「アスリートフルコース」とも言われています。

聞いた話ですが、体を大きくしなければならない、某大学ラグビー部では、ランチに炭水化物たっぷりのお弁当に加えて、各自牛乳1リットルを飲むことが義務付けられているのだとか。それでも牛乳が苦手な体質の人もいますし、本来は個人差をきちんと鑑みて、それぞれの体質や好み、目的にあった栄養指導、食事指導をすることが肝心だと、私個人的には考えています。
食事は毎日続くこと。「食事もアスリートのトレーニングだ」という考えもありますが、できることなら食べることが苦痛にならない、楽しくなるようなものであって欲しいです。体に良いことと、美味しいことは、十分に両立できるはずです。食べなければいけない物が多くて、胃腸の負担が気になる場合は、食事回数を増やすといった工夫ができるかもしれません。それぞれの体にとってのベストを探るのも、アスリートフードマイスターの役割だと思うのです。その上で、怪我や病気の少ない体、競技に向かっていける体になってくれるのが何よりですよね。
とあるシェフです😅
たいへんわかりやすかったです。
実は自分の仕事もアスリートと考えたらどうなのかな?という発想からお尋ねさせていただきました。
早朝からスケートのロケットスタートのような感じで忙しいときは夕方まで滑り続けるような感じです。FBに気を取られることもありますが、走りながら投稿したりメッセージに返信したり。
bgm的にココロを流して聞いていますが、張り詰めた緊張が長時間続くので、いつも夕方倒れてしまうのです。
なのでとても参考になりました。
結構食べても太らないので消費エネルギーも多かったのですね。
カルシウムなど意識してみます。
いろいろご丁寧にありがとうございました。
毎日体力勝負でお食事を作っておられるのですね。立ち仕事も多いでしょうし、エネルギー面もメンタル面もケアしておきたいお仕事ですよね。
3度のお食事の合間に、バナナ程度の捕食を入れるだけでも、持久力が変わってくると思います。即エネルギーに変えるには、単糖類が良いのですが、ある程度の持続感を持たせるなら多糖類がオススメです。単糖類であるジャムの入った、(多糖類である小麦粉が原料の)パン、つまりジャムパンは捕食として良いそうですよ。
お客様の事を考えてのメニュー作り!素晴らしいですね!確かにお客様とアスリート、どちらも相手の事を考えてのメニュー。共通点が多いですよね。なるほどです!!色々、自分の状況にあった栄養素を考えて摂取すれば良いのですね!!私も色々、考えて物作りをしないと駄目ですね(;´Д`)
結局のところ、食べることって、「基本の考え」を基にして、個人個人の体調や生活習慣などに合わせてカスタマイズしていくことで、より質の良い食事になっていくのでしょうね。相手のことをよく知るということも、アスリートフードマイスターとして必要なスキルで、聞き取るための練習などもするんですよ。よく話を聞いて、相手を知って、必要なメニューを組んであげるという作業です。全ての人にそれをやることは難しいですが、せめて身近な人には、相手の必要とするものを作れる人でいたいなと思いますね。
おはようございます^ ^
猛烈寒波に身構えつつ…何とか風邪もひかずに過ごせており、ありがたい事です。
料理は愛情… そして作り手も健康でなくてはd( ̄  ̄)感じ入りました。
お出掛けご飯を頂く時も、美味しく感謝して大事に味わいたいですね。
奈良、雪は大丈夫ですか?くれぐれもご自愛下さいませ。
クルミのママさん、ありがとうございます。
うちは娘がダウンしてしまいましたが、ようやく体調回復してきました。私はおかげさまで元気なのですが、家族の健康を守る立場としては、ちょっと悔しかったです(笑)
奈良の雪は昨夜しばらく積もりそうな勢いで降っていましたが、以外と早く止みました。というわけでいたって通常モードです。
まだこの後ぐっと冷え込むようですので、クルミのママさんもご自愛くださいね。
ためになるにきまってるぅ😎
ありがとうございます!