Time’s up

今回の投稿は「食」と関係ないお話です。

ハリウッドでのセクハラに立ち上がろうという「#Me Too」ムーブメントを皮切りに、それまで口を噤んでいた女性たちが少しずつ声を上げ始めました。

日本時間の今年2018年1月8日にアメリカロサンゼルスで行われた、ゴールデングローブ賞では、この動きに賛同する人たちが会場を黒いドレスで染めました。会場で語られた「Time’s up」は、反セクハラ運動への大きなスローガンとなっています。

そして、同じく今月、日本時間の29日にニューヨークで行われた、第60回グラミー賞授賞式では、多くのアーティストが胸元に白のバラを刺して、反セクハラへの意思表明をしました。

アメリカ女子体操界でも、残念ながら大きなセクシャルハラスメントのニュースがありました。私も、娘が体操をしているだけに、体操女子世界最高峰のアメリカで起こった多くの選手に対するセクシャルハラスメントが気になって、このニュースを追いかけていました。知れば知るほど腹がたつやら、恐ろしいやら。
リオ五輪で金メダルを取った、シモーン・バイルス選手も被害を受けたという、アメリカ体操代表チームの元スポーツドクター、ラリー・ナッソー被告には、先日、最長禁錮175年の有罪判決が出ました。
選手がコンディションを崩した時に、誰よりも頼りにするであろうチームドクターによる、見境ないセクハラ。被害にあった選手たちがどれだけつらい気持ちで体操に向かっていたのかと思うと、悔しくてなりません。
スポーツにはそれぞれの競技の特徴があります。女子の体操は、柔軟性と、筋力、瞬発力に、芸術性などの要素が求められます。体重制限も厳しいですし、段違い平行棒や、平均台など、高い場所での演技は、恐怖心との戦いでもあります。ケガも少なくない競技です。そして、体の線が出るレオタードを日常的に着用するスポーツでもあります。
それを間近で見ていた代表チームのドクターによる、17年間に渡るセクハラ。まさかと、耳を疑いたくなるニュースでした。どんな目で選手たちを見ていたのだと考えると、虫酸が走ります。
おそらく世界の体操女子の中で、最も選手層の厚いアメリカで最高峰のチームに入れたのは、選手たちの血の滲むような努力の結果です。それをサポートするはずの人物による悪業。それでなくても、日々戦い、苦しんで、もがいて、それでも体操と向かい合ってきたはずの彼女たちが、とんでもないことで苦しめられてきたのです。許しがたいことだと思います。
できるだけ良い環境で、競技に集中させてあげたいというのは、スポーツに打ち込む選手をサポートする側の人間なら、当然の感情だと思ってきました。でもそれは当然と思わない人もいるということが、残念ながら世の中には確実に存在するのです。
たかだか小学生のうちの娘の体操の話を、ここで引き合いに出すのはかなりおかしいとは承知の上で、少しだけ書かせてください。
以前娘も、あることをきっかけに、パワーハラスメントを受けた数ヶ月がありました。詳しく書くつもりはありませんが、私たち親も必死になって対策を講じ、おかげさまで今は穏やかな環境で体操を続けられています。今の環境に心から感謝しています。
この経験から、立場の強い者からのハラスメントというのは、ある日突然、驚くほど理不尽に始まって、それは防ぎようがないくらいの勢いでやってくるということを知りました。さらには、白を黒にされてしまうくらいの力の前では、訴える声も小さくてどこにも聞こえないこと。日常的に行われるハラスメントは心を削り取り、前へ進む力を根こそぎ奪い取るほどにネガティブなエネルギーをもたらすものだということも、知りました。
世界中の組織にあることだと思いますが、権力を持つ人や、特別なポジションにいる人、力を行使できる立場にいる人は、いわば「何でもできて、何やっても立場が揺るぐことがない」という勘違いをしがちです。だからやられる側の痛みや、心の消耗なんて、存在することすら知らないでしょう。いや、知りたくもないでしょうね。

 

立場の強い弱いはあると思います。でも、人権に上下はないんです。そこを勘違いして、立場を利用し、人権を踏みにじる行為を平気でする人も残念ながらいます。

逆に、立場が弱いゆえに人権を踏みにじられても、我慢するしかないと受け入れてしまう人もいます。心が摩耗しきって、何かを変えるだけのエネルギーがすっかり失われてしまうというケースもあると思います。また、その力を持つ人の元でしか成長できないと思いこんで、辛いことがあっても離れられないという気持ちもあるでしょう。

 

ハリウッドのプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの悪行を知りながら、ここを離れたら、仕事がなくなるかもしれないという恐怖心から、言われるがままだった女優さん、見て見ぬ振りをした俳優さんが多数いたことも、アメリカ女子体操チームで、おかしいと思いながらも声を上げられなかった選手たちのことも、そして選手の親たちのことも、そうですね。心身ともに支配されてしまうことが、どれだけ恐ろしいことなのか。

悲しいけれど、そんな風に我慢したり、感情に蓋をしたりしてきた人を、責められないと私は思っています。権力者を相手に立ち向かうことは、怖いことです。
そんな簡単にはできません。だからこそ、今の映画界、音楽業界でのムーブメントや、裁判にまで発展したアメリカ女子体操チームでのセクハラ問題は、大きな、力強い前進なのです。

間違っていることは間違っている。
精神的に壊れそうになる前に、助けを求めたり、逃げたり、大きな声で訴えたりすることは、恥ずかしいことではないのです。恥ずかしいのは、権力を履き違えて、人権を踏みにじるような使い方をする人たちなはずです。
誰にも、他人の人権をないがしろにする権利はありません。本当にシンプルなことですが、やりたいことにまっすぐ向かって、本来集中すべきことに全力を傾けられること。そんな当然のことが間違いなく手に入れられる世界を望みます。勇気を出して立ち上がり、#Me Too、#TIMESUPと声を上げたすべての人々の努力が踏みにじられないためにも。

“Time’s up” への6件の返信

  1. そう言うことって無くならないですよねぇ☠️全く無力ですが自分だけでも清く正しく美しくありたいにきまってるぅ😀

    1. 残念ながら、いつの時代もあるお話なんでしょうねぇ。みんなが清く正しくありたいと思える世の中ならいいのですがね。。。

  2. こんにちは〜^ ^
    残念ながら、地位や名誉を持ったがために自身を見失う人や、暴力や圧力を行動力や成果と勘違いする品位ない人もたくさんです。
    たとえ小さな声だって、あげ続ければ新しい時代につながると思いたい… 自身のため、あとにつながる世代のためにも。子を持つ母として切に願いますね!(◎_◎;)

    1. 品位って大事ですね。
      お仕事でこれまでにお会いした、いわゆる超一流の方々って、共通して、どの人にも分け隔てなく心配りをしてくださる方々でした。そういう尊敬できる方ばかりだったら、本当にいいのですがね。。。

      でも、せっかくのムーブメント。子供達の時代にはこんなことで苦しむ人がいない世の中であってほしいものです。

  3. このような話、本当に残念ですが、まだまだ有るのでしょうね…。「#Me Too」をきっかけに苦しんでいる全ての方々がこの苦しみから解放され憎き汚れた悪魔に天罰が降ります様に!!娘2人なので人事ではありません。

    1. 本当に我が事のように感じますよね。性別や地位に関係なく、まっとうに評価される時代になってほしいものです。
      権力を持つことは悪いことではないはずですが、権力を持つ人の人間性によっては、一生傷が残る暴力になってしまいますものね。

コメントを残す